La Rose Bleue

2020/04/18 Sat. 2017年シーズンの思い出


横浜DeNAベイスターズがラミレス政権になってから、楽しかったシーズンを決めるにあたって2017年と2019年が挙げられるが、とても甲乙つけがたい。今回は、2017年のシーズンについて語ろう。



最終的に2016年と同じく3位で終わったシーズンだが、昨年と違うのはクライマックスシリーズを突破、19年ぶりの日本シリーズ出場である。 順番に触れていこう。


ペナントレースも終盤に差し掛かる8月22日。この日からは横浜スタジアム(ハマスタ)で3日間、首位の広島を迎え撃つ。
東京ドームで巨人に3タテをくらった後だったので、正直勝てるか不安だった。
その不安は的中。広島に先制され突き放されてしまう。あーあ、連敗の傷を引きずってるよ。今日は見ない方がよさそうだな。そう思った自分は早くもニコ生を切ってしまうのであった。


それからは夕食を食べたり風呂に入ったり余った時間を無駄にすごしたりしていた。夜も深くなりつつある時刻、どうやら試合が終わったようだ。再びネットを開いてスコアボードを見ると……なんと、勝っているではないか。
しかも9回裏の欄に記された「4X」。一瞬自分の目を疑った。いったい何があったのだとフォロワーさんに尋ねると、3者連続ホームランで逆転サヨナラしたという。
それを知った自分は呆然としていた。だが、これが伝説の序章だったことは、この時まだ誰も知らない――


翌日はいつもと変わりなくニコ生で試合の様子を見ていた。またしても先制されるベイスターズ。しかし、終盤にロペスの一発で同点に追いつく。
延長戦に入ると、梶谷が見事サヨナラタイムリーを打ってみせ、2日連続のサヨナラ勝ちとなった。


その翌日も、やっぱりベイスターズは先制される。その後、筒香のタイムリーで追いつき、9回裏にしばらく打てずに苦しんでいたベテランの後藤がチャンスメイク。代走が送られた後、倉本に打席が回ってきた。
「もしかして今日もいけるんじゃね?」球場全体がそういう空気なのが、あの時画面越しでも伝わってきた。そして――


倉本が打ったのはフルカウントになった後の球だった。ふらふらと上がった打球はセカンドにいる守備の名手・菊池の方へ……セカンドゴロだな、こりゃ。と思った次の一瞬、打球がイレギュラーした。それは、菊池でも取れないほどの。
二遊間がもたついている間に代走の髙城が全速力でホームイン。見事、3夜連続サヨナラ勝利を決めた!なお、倉本の記録は内野安打だった。



その後、巨人とのAクラス争いに競り勝ち、クライマックスシリーズの進出を3位で決めたベイスターズ。兵庫で2位の阪神タイガースと戦うことになる。
勝敗は読めなかった。なぜなら、単純に勝敗数でみるとベイスターズは阪神には相性が悪いのだが、甲子園では阪神より分があったからだ。


2戦目の日、大雨が降っていたが、NPBの指示により強行開催された。両投手が登板中にマウンドの土を要求するなど試合はスムーズに進んでいるとは言えなかったが、最終的にはベイスターズ打線が勢いを取り戻し、乙坂のホームランなどで大量得点で勝利!
翌日もその勢いのままベイスターズがファイナルステージへの進出を決めた。ネットに投稿された試合後の二次会では、ベイスターズと阪神のファン同士でエール交換がされたそうだ。普段は天敵の阪神だが、悪い気分ではない一体感だったのをよく覚えている。
2戦目の試合は日本のあらゆるメディアはもちろん、海を越えたアメリカでも報じられ、「世紀の泥試合」と呼ばれるようになる。



ファイナルステージは首位広島の本拠地(ズムスタ)だった。しかし1戦目は、先ほどの泥試合とは比べ物にならない、シャワー程度の降雨で、コールド負け。試合後、中には苛立つ選手もいたそうだが、筒香が「明日から勝てばいい」と全員をまとめたエピソードがある。
その翌日からベイスターズは2連勝し、アドバンテージを含む広島に2-2と並ぶ。その次の2日間は雨天中止になったが、そのあとも2連勝!コールド負けの後、首位広島を4連勝で破り、下剋上で日本シリーズ進出を決めた!


ベイスターズが2年連続でクライマックスシリーズ出場を決めたその日のヒーローインタビューで、キャプテンの筒香はこう言っていた。
「甲子園、広島で勝って、必ず横浜に戻ってきます!」と。自分は「ふーん」と、正直半信半疑で聞いていたが、それが現実になったのである。日本シリーズが決まってからしばらく、ふわふわした気分だった。


試合前、自分が知ってる範囲では、ネットのベイスターズファンはみんな自分も含めてネガティブだった。「どうせ4タテされる」とか、「勝ててもせいぜい1勝だよ」とか。相手がパリーグの常勝球団ソフトバンクだからだ。しかも、後年のとは違う、完全体の。
中には、ベイスターズがソフトバンク相手にぎりぎり許されるハンデを考えようと言う者もいた。



ファンの期待と不安を背に抱えてのヤフオクドームでの日本シリーズ第1戦。この試合には乙坂もDHで先発出場。先発投手は重要局面に強い井納が任された。しかし、井納の乱調で大量失点。翌日も敗戦してしまった。


3戦目も落としてしまい、後がなくなったベイスターズ。「このままでは本当に4タテされる」「33-4の再来かそれを超えるかもな」ともささやかれていた。
4戦目、ソフトバンクの最初の攻撃。これまでベイスターズは上位打線にきっちり先制点を取られるという失点の仕方を繰り返していた。先頭打者を打ち取れるかが鍵――
先発を任されたルーキーの濵口はソフトバンク打線を8回一死までノーヒットノーランで抑え、バッテリーを組んでいた髙城が3打点を挙げた!


俺らのハマスタで絶対に胴上げさせるな。ベイスターズファンの気持ちはこれで一致していた。中盤にリードを許すも、逆転に成功したベイスターズは接戦をものにし、ソフトバンクによる俺らの本拠地での胴上げを阻止した。


6戦目で、ソフトバンク打線の弱点が見えてきた。それは、左の軟投派。その日の先発の今永もノビのあるストレートと多彩な変化球を使い分ける左投手だ。今日勝てば日本一決定は明日に持ち越され、4戦目の終盤までノーノ―していた濵口が先発するだろう。そうすれば……!


9回裏二死。あと一人抑えれば希望はさらに大きくなる。クローザーの山崎康晃が対峙したのは、その昔暗黒時代だったベイスターズに捨て台詞を吐いてFAで出ていった内川。どうだ。ベイスターズはここまで強くなったんだ。ここで打ち取らせてもらうッ!!




……結論から言うと、叶わなかった。おまえたちに日本一はまだ早いと言わんばかりに突き刺された同点ホームラン。ソフトバンクのクローザー・サファテを3イニング相手にしたがあと一歩のところで得点できず。11回の裏、力尽きた。


リーグ内での下剋上は成し遂げたが、「史上最大の下剋上」はならなかった。シンプルに悔しかった。 あれさえなければ、ここでああしてれば、なんてタラレバを言うが、どうにもできない。
だからこそ、来年こそリーグ優勝して、日本一を勝ち取ってくれ。自分らはそうして今日もベイスターズについていくのである。



P.S.
日本シリーズ開催と同時期ぐらいに、ソトが入団テストのため来日していた。後に本塁打王を複数回獲得するのは、まだ誰も知らなかった。